遅ればせながら平城遷都1300年特集コラム(1)〜奈良時代にも評価制度があった!!

今回は、企画開発部の小林より、「奈良時代の評価制度」についてお話いたします。
インソース企画開発部の小林(テキストの作成やお打合せでお世話になっているお客様も多いと思います。いつもありがとうございます!)は、長〜く大学院生(30歳まで)をして古代史を研究していました。遺跡や古墳が大好き!かつ、とても詳しいです。

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**奈良時代の評価制度
評価制度や人事評価は、現代でも、組織を運営する上で重要なものですが、日本では、奈良時代からすでに、唐から輸入した「律令」という法令を基に、人事評価が行われていました。

現代でも、「考課」という言葉を勤務評定の意味で使いますが、これは奈良時代から使用されていた言葉で(唐の法律用語を輸入)、「功過を考校」(功績と過失を調べ)、「才芸を課試」(能力を試す)という意味です(「考」が「調べる」の意味、「課」が「試す、試験する」の意味)。


**奈良時代の評価者
中央・地方ともに、すべての役人は、それぞれの官庁のトップに、1年に1度評価されていました。評価を行う際には、現代の評価面談さながらに、被評価者と対面し、評価の結果とその根拠(事由)を本人に読み上げていました。(現在同様に、被評価者が納得しないということもあったでしょう)

**奈良時代の評価基準
また、「能力評価」はどのように行われていたかは不明ですが、奈良時代でも、「勤務評価」、「業績評価」に当たるものはすでにありました。

「勤務評価」は、当時の儒教の思想に基づいた全役人一律のものがあり、「業績評価」も大臣から、国家官僚、国の地方官に至るまで、評価基準が設けられていました。

奈良時代の「勤務評価」は、以下の、「善」という儒教の思想に基づいた、「徳義」・「清慎」・「公平」・「恪謹」の4つの評価基準がありました。

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徳義」:周りから、徳があり、人柄が素晴らしいと思われているかどうか
清慎」:清廉潔白で、慎み深いかどうか
公平」:私を捨て、公の為に働き、公平な態度で仕事に臨んでいるかどうか
恪謹」(かくごん、かくきん):仕事を敬い、力を尽くして仕事に励んでいるかどうか

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一方、「業績評価」は、役職ごとに、「最」と呼ばれる評価基準があり、例えば、民政を行なう「民部省」の役人の「最」は、「戸籍に登録されている民衆の数を減らさず、倉庫を収穫物で一杯にすること」でした。

**奈良時代の評価の仕方
評価の基準を満たすと、「善」と「最」の評価が得られ、それらを1年にいくつ獲得したかによって、「上上」から「下下」の、9等(9段階)の勤務評定が定められます。

「上上」から「中中」の5等が、昇進に関係するプラスの評価となる一方、「中下」以下の4等はマイナスの評価になります。その評価の組み合わせは、以下のようになります。

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上上」:1最以上+4善  「」:最なし+4善  
」:1最以上+2善、または最なし+3善
」:最なし+2善   「中中」:最なし+1善

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」以下は最・善ともに1つもない場合で、その場合は以下の基準で評価されました。

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」:仕事が粗い 
」:仕事の際に「愛憎」(好き嫌い)を持ち出し仕事が理に背いている
」:公のためではなく、自分のために仕事を行ない、職務を滞らせる
下下」:仕事上の権限をつかい、お金を着服する

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また、1年の勤務評価のことを「考」といいますが、役職についている任期中の各年の「考」を計算してその結果が昇進に関わる最終の勤務評定になります。

昔の役職の任期は、基本的には6年ですが、その任期中の6年間の勤務評定=「6考」がすべて「中中」ならば、位階が1階級上がるというのが評価の基本的な基準になります(例えば、従六位下から従六位上に昇進)。

また、6考とも「中中」という条件を満たした上に、さらに「中上」が3考、「上下」が2考、「上中」が1考ある毎にさらに1階級が上がり、「上上」が1考ある毎に2階級上がります。

下考(「中下」〜「下下」)の評価は、上考(「中上」〜「上上」)の評価で相殺することができ(「中上」と「中下」、「上下」と「下上」のように上・下考を対応させて相殺する)、相殺した後に、上考が1つでも残れば、昇進の対象となっていました。

**今も昔も難しい評価、お悩みであればインソースにご相談下さい
奈良時代の評価制度は、今と比べるとシンプルですが、評価基準をどのように業務で具体化するか、ハロー効果、寛大化傾向などの評価者の偏りなどは当時から存在していたのではないかと思います。

古代は、記録が少なく、実態を知るのが難しいことが多いです。まだ不勉強で、その辺をじっくりと調べておりませんので、調べてわかりましたら、また別の機会にご報告いたします。


評価制度導入のご支援や、評価者研修は是非インソースまで。

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小林による「奈良時代」シリーズは他にもございます。ぜひご覧下さい!
奈良時代にも[休暇届]があった!!
奈良時代にも[プロジェクト管理]があった!!

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